声明文~6月17日最高裁判決への抗議と津島原発訴訟の今後のたたかい~
声 明 文
~6月17日最高裁判決への抗議と津島原発訴訟の今後のたたかい~
1 2022年6月17日、最高裁判所第二小法廷は、福島第一原発の放射能汚染事故の被害者住民らが起こした4つの裁判(生業訴訟、群馬訴訟、千葉訴訟、愛媛訴訟)において、国の東京電力に対する行政上の規制権限の不行使について、責任がないとする判決を下した。
首都東京も含め日本が消滅してもおかしくなかった大惨事が福島第一原発事故であった。二度とこのような事故を繰り返してはならい、と世界中が思ったはずだ。しかし、その悲劇は忘れ去られ、なかったものとして封印され、原発再稼働の議論が盛んとなっている。
最高裁の判断は、この動きを後押しするものであり、国への「忖度」判決と批判されてもしかたのないものであり、被害者や国民の多くの思いに背を向けるものであると同時に、緻密な論理構成と事実認定により国の責任を断罪した幾多の下級審裁判官の真摯な努力を踏みにじるものである。
2 多数意見の判決理由は、正味たったの5頁(4500字前後)である。
仮に、経済産業大臣が規制権限を行使したとしても、東京電力が講じる防潮堤等の設置では事故を回避できなかったため、国の不作為と事故の結果との間には因果関係が認められないとして、国の責任を否定した。これまで被害者(原告)が必死に主張してきた、予見可能性、法令の趣旨・目的、規制権限行使の在り方などについて何ら判断を示すことなく、いわば結論ありきで因果関係のみを否定したもので、「判決」の名に値しない。
他方、三浦守裁判官の少数意見は、原子力安全規制法令の趣旨・目的を明らかにし、「長期評価」の信頼性を認め、東側にも防潮堤が設置されるべきこと、防潮堤の設置に合わせて主要建屋等の水密化の対策が求められ、これにより事故を避けられたとして国の責任を認めるべきである、という反対意見を約30頁(2万8000字前後)にわたって述べており、その内容は、説得力に富む内容となっている。
3 現在仙台高等裁判所に係属している津島原発訴訟の控訴審は、国の規制権限不行使の責任を断罪した2021年7月30日の福島地方裁判所郡山支部の勝訴判決を受け、一審判決が排斥した原状回復及び被害回復の慰謝料の増額を求める裁判である。
同裁判では、一審が認めた国の規制権限不行使の責任を改めて問うとともに、重大な被害を引き起こす原発の設置を認めこれを積極的に推進してきた国の作為責任を問い、また原発推進政策という先行行為の結果発生したふるさと剥奪の被害に対しその被害を除去し、元のふるさとを復元する国と東京電力の責任を正面から問う裁判である。
地域に住む住民と自然とのかかわり、住民どうしの濃厚な人間関係で結ばれたコミュニティ、祖先から子孫へ世代を超えて受け継がれるべき歴史や伝統が国策の失敗により奪われたままでいいのか、そのような国の「廃村棄民」が免罪されていいのかが問われる裁判であり、その帰趨は、福島第一原発事故の被害者についてはもちろん、全国の原発立地自治体の住民、その周辺住民、ひいては全国民の利害に関わる問題である。
4 津島原発訴訟に取り組む「原告団」・「弁護団」は、仙台高裁において国と東京電力の責任を問う本件訴訟において勝利判決を獲得し、原状回復と被害救済を目指すとともに、再び原発事故を繰り返さないという全国民共通の利益の実現のために、全力でたたかうことをここに表明し、国民の皆さんに理解と支援を心から呼びかけるものである。
以上
2022年9月28日
福島原発事故津島被害者原告団
福島原発事故津島被害者弁護団